伊勢市伝統工芸振興シンポジウム、展示

2012年02月05日(日) 伊勢市伝統工芸振興シンポジウム、展示 (車)

昨日は久しぶりにジョグ(須原大社(御頭神事の巡回道順表ほか))で10kmほど走り、朝から筋肉痛だった。そのため、今日は家でジッとしていようと思っていたが・・・

朝刊の三重版を見ると次の記事が掲載されていた。

伊勢市伝統工芸振興シンポジウム等の朝日新聞記事(2012-02-05)

伊勢市伝統工芸振興シンポジウム等の朝日新聞記事(2012-02-05)

 

そういえば、次のパンフレットを思い出した。予定を入れなくてはと思いつつ、予定を入れ忘れていたのだ。これで、一日ゆっくりの予定は一転した。

伊勢市伝統工芸振興シンポジウムのパンフレット

伊勢市伝統工芸振興シンポジウムのパンフレット

伊勢市伝統工芸振興シンポジウムのパンフレット

伊勢市伝統工芸振興シンポジウムのパンフレット

 

基調講演を拝聴する前に伝統工芸品展示を見学するため、12時半頃には臨時駐車場となっていた皇學館高校の駐車場へ到着。

皇學館高校の駐車場にて

皇學館高校の駐車場にて

 

まずは、皇學館大学 記念館へと向かった。

皇學館大学 記念館

皇學館大学 記念館

記念館へ入ると入口の受付で記帳。予想以上に見学者が多かった。

気になった工芸品を人が写らないようにパチリ。まずは和釘。神社をめぐると目にすることがある私にとっては馴染みの釘だ。

和釘(わくぎ)

和釘(わくぎ)

また、この隣には吹きガラスが展示されていた。(上の写真の右側に少し写っている)こちらは伊勢の伝統工芸ではなさそうだが、和やかな透明感? 何といえ ばいいのだろうか。温かみのある透明感・・・ 言葉で表現するのは難しいが、円やかな形状とそこに差す光と影がなんとも印象的だった。思わず手に取り、様々な方向から眺めてみたく なった。

そして、こちらが神宮の神職も利用されている浅沓。

浅沓(あさぐつ)

浅沓(あさぐつ)

ここでは浅沓師である西澤利一さんに直接お話を伺えた。以前から疑問に思っていたのが、和紙でできている側面から上部と底板をどのように接続しているのか? 答え は、「釘で固定されている。」だった。なお、底板には杉の内板と楠の外板があり、直接地面に触れて劣化が激しい外板を交換し易い仕組みになっているそうだ。

また、後継者について伺うと、「浅沓作りに情熱を持った若い女性が二名入ってくれ、式年遷宮に向けて即戦力です。」とのことだった。

 

その他、神具、一刀彫、根付、刳物、練り物、竹笛、箸、木工芸、春慶塗、漆器、陶芸、染色、和紙、提灯などを見学後、記念館を後にしてシンポジウムが開催される記念講堂へと向かった。

皇學館大学 記念講堂

皇學館大学 記念講堂

この記念講堂へ入るのは初めて、立派な講堂だ。

伊勢市伝統工芸振興シンポジウム

伊勢市伝統工芸振興シンポジウム

 

定刻になると、伊勢市長の挨拶があり、

奈良国立博物館学芸部長 西山厚さんによる基調講演「美術工芸の伝承と再生」が始まった。西山さんは「奈良と伊勢を結ぶ」というテーマから「奈良での実例」を紹介された。半官半民の団体による美術工芸技術・技能の維持、発展、後継者の育成、さらには御自身で企画実践している「60分一本勝負」。これは、「奈良の子供たち(小学5年生)を奈良国立博物館に招き、60分で奈良を好きにさせる勝負、60分で好きにさせられなかったら負け」。真剣勝負だからこそ楽しそう。など・・・

 

その中で私が写真を撮った数ポイントをさらに紹介。

正倉院の宝物は戦時中、各地に分散して保管された。終戦を迎えるとそれらの宝物は正倉院へ戻されることになったが、奈良の地にありながら宝物を目にしたことがない県民の請願があり、奈良国立博物館にて保管されていた宝物の一部が「正倉院展」として一般公開された。
その際、見学者から次の言葉が、

奈良国立博物館学芸部長 西山厚さんによる基調講演

奈良国立博物館学芸部長 西山厚さんによる基調講演

 

また、漆工であり漆芸家である北村大通さんが当麻曼荼羅厨子を修理された時の思いがこれだ。

奈良国立博物館学芸部長 西山厚さんによる基調講演

奈良国立博物館学芸部長 西山厚さんによる基調講演

美術工芸には秘めたり、強い力がある。

さらに、北村大通さんの座右の銘。

奈良国立博物館学芸部長 西山厚さんによる基調講演

奈良国立博物館学芸部長 西山厚さんによる基調講演

「求めしところを求めよ。」 多分このことは、美術工芸だけでなく、あらゆることに通ずると思うが、分かっているけどなかなかできないのが現実だ。目先の事にとらわれて本質を見落としてしまう。(日々、反省)

最後に、さらに噛み砕いて「古人を学ぶ方法論」を。

奈良国立博物館学芸部長 西山厚さんによる基調講演

奈良国立博物館学芸部長 西山厚さんによる基調講演

以上、結果としては一般論であったが、飽きさせない内容に加え、西山さんの話術の巧みさのため、「あっ」という間に講演が終わってしまった。

 

そして、基調講演の後はパネルディスカッションとなったが、

パネルディスカッション「伝統工芸技術と現代の産業」

パネルディスカッション「伝統工芸技術と現代の産業」

テーマ「伝統工芸技術と現代の産業」が大きすぎるのか、ディスカッションにはならずに現状報告で終わってしまった。

パネルディスカッション「伝統工芸技術と現代の産業」

パネルディスカッション「伝統工芸技術と現代の産業」

パネルディスカッションの最後にコメンテータである西山さんが締めの言葉を述べられる際、「私は45分ぐらい話せます。」と言ったにもかかわらず、時間が押しているから「3分で」と貴重な言葉を伺う機会を逸してしまった。

この瞬間、私は形だけのシンポジウムであることを確信した。(残念)
主催者にまったく熱がない。思いが深ければ時間なんてどうでもなるだろう。西山さんには市民の前でもっと語っていただきたかった。

短い時間での西山さんのコメントを要約すると、次の通り。

  • 伊勢の伝統工芸には二面性がある。一方は、ルール重視で作り手が自分を入れてはダメな「神宮の御神宝」、そして他方は時々刻々と新しいものを作り出す必要がある「生活密着品」だ。
  • 伊勢には「20年に一度の遷宮」があり非常に恵まれている。そこそこ商品が売れる町なので、この機会を活用できないようであればダメだ。
  • 今後は子供たちに「伝える」ことが重要で、「伝える」ためには、まず自分たちが「知る」こと、さらには「力を合わせる」ことが必要だ。「力を合わせて」「知り」「伝える」。

最後の「力を合わせて」「知り」「伝える」で、私は「知る」の一部しか実践できていない。自分自身にも鞭を入れよう。

 

そして、極めつけは鈴木市長による最後の挨拶だった。

「私はファミコン世代なので・・・ 竹トンボも作れません。・・・」

とネガティブな発言に終始していた。できれば、「竹トンボを作ってみたけど、難しいものです。・・・」のようにポジティブな行動を期待していたのに、残念だ。

 

結局、今回のシンポジウムでは、私としては得るものはあったが、「伊勢の伝統工芸」に対する主催者の思いはどうなんだろう?の疑問が残るものとなってしまった。「体裁」だけで「熱」が感じられない。

「火」が点いた人は何人いただろう?

 

 

最後に、こちらがシンポジウムの開催記念に進呈された漆塗り箸。
伊勢市産業支援センターの漆芸講座の受講生が作ってくれたものだ。大切に使いたい。

【参考】 記念品の漆塗箸 遂に完成! (伊勢の起業と伊勢市産業支援センター 活動日記

シンポジウム開催記念の「漆塗り箸」

シンポジウム開催記念の「漆塗り箸」

シンポジウム開催記念の「漆塗り箸」

シンポジウム開催記念の「漆塗り箸」

シンポジウム開催記念の「漆塗り箸」

シンポジウム開催記念の「漆塗り箸」

早速、手にして使い始めた。断面形状が五角形で軽い。今まで断面形状が正方形の箸を使い続けていたためか、この箸を最初手にした時はかなりの違和感があったが食事を始めるとまったくそんなことは感じなくなった。

今後、耐久性などについては時間をかけて体験しよう。

 

伝統工芸には私も興味があるので、まずは何らかの形で体験してみたい。
漆塗りの生活雑器(茶碗、皿、コップなど)って、どうなんだろう。

 

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