2013年02月09日(土) 山の神での舞い~悪魔祓い(村松町の御頭神事) (車、徒歩)
辻舞い(村松町の御頭神事) にて龍宮境内での辻舞いが続けられるなか「山の神」境内の隣に広がる広場(ツムギ場)へ向った。ツムギとは、山のように積み上げられた旧年のしめ飾りや注連縄、御札が点火された後、さらに合計で約600束の青松葉が燃やされる大かがり火だ。
村松漁港から西へ向うとブロック塀の向こうには、もうもうと立ち昇る煙と燃え盛る炎が見えた。
ツムギへ近づくと
時折強い横風に煽られて炎が地面を這った。
また、ツムギの回りでは火入れ後から次の行動が数分から10分ごとに繰り返されていた。
その行動とは、警護の役人(やくびと)が提灯を掲げながら「エットー エットー」と声を上げながらツムギの回りを走ると
別の場所に積まれた青松葉を竹杖の先に挟んだ若衆もツムギを回りながら青松葉をツムギにくべた。青松葉をくべた後は
警護衆と合流し身体を押し付けあった。
しばらく押し合うと、バラバラになり元の場所へ戻った。
水分を多く含んだ青松葉がツムギにどんどん追加されると白煙はさらに量を増した。
炎も人を飲み込むほどに高まると
改めて警護衆と若衆の押し合いが繰り変えされた。
ツムギの火力は徐々に増し、
警護衆と若衆の押し合いも繰り変えされた。
そして、辻舞いを終えた御頭が「山の神」の境内へ向う準備が整うと、浜から「山の神」へ通じる道の両側では町会役員や警護衆らが提灯を掲げて御頭を迎えた。
提灯の列に迎えられた御頭が「山の神」の境内へ到着すると
五起しの舞が開始された。
そして舞いを終えると
御頭は「山の神」の境内へ横たえられ、舞衣はいっぱいに広げられた。御頭はしばらくこの状態で安置された。
この間、ツムギにはさらに青松葉が追加されてツムギはさらに燃え上がった。
その後、御頭が立ち上がると動きやすくするために神楽師により舞衣が縛りあげられていった。
その準備が進むなか、ひとりの神楽師がツムギに近づくと笛を吹き始めた。
笛を吹き終えた神楽師は御頭の状況を確認後、再度笛を吹いた。
このやりとりが数回繰り返されると別の動きがあった。ツムギに向かい提灯を掲げた警護衆と祭礼係が二列に列ぶと
その間を若衆が往復し、多量の青松葉をツムギにくべた。
次から次へと松青葉がくべられると
ツムギの火力が衰えたに見えた。この短い時間でツムギにくべられた青松葉の数はざっと200束。この青松葉は「伏せ松葉」と呼ばれる。
周囲は白煙に包まれ、一瞬ホワイトアウトした。
知らぬ間に御頭はツムギの近くへ移動したようで
私が「山の神」境内を確認した時にはその姿はなかった。
ツムギ場に御頭を見つけてパチリ。
この後、何が行われたか? 伊勢市史第8巻(民俗編) P.408 から引用する。
警護衆と祭礼係は列を解き、御頭の周りを取り囲む。若衆は竹の杖を赤と青の提灯と交換し、高く掲げられた御頭と若衆の押し合いが始まる。この時、漁業者は海側へ、農業者は山側へ押し合い、どちらが多く押されたかで、その年の繁栄を占うという。御頭がその中から飛び出し、口をカチカチ言わせながら火の回りを走る。そして元の場所に戻り、また押し合いをする。三回から五回くらい繰り返し、御頭はいったん東のほうから出て行く。
まずは、竹の杖を赤と青の提灯に交換した若衆が・・・
その中から御頭が抜けだし、ツムギの回りを駆けた。
その後ろを若衆が追った。
このやりとりが数度繰り返された。
するといつの間にか御頭は東の方へ姿を消した。
その後、ツムギが竹の杖で打たれた。
御頭はツムギ場の東、少し離れた場所でしばらく安置された後、舞衣の縛りが解かれると再びツムギ場へ現れ、町内会長から刀を受けとると悪魔祓いの舞いを舞った。
舞い終えるとツムギを一周し、
刀を町内会長に戻した。
最後に、御頭がツムギに拝礼(三回?)すると
ツムギ場での神事は終了した。
拝観者にとっての神事はこれで終了だ。
ただし、御頭神事はまだ続けられたと思われる。その様子を再度伊勢市史第8巻(民俗編)から引用。 P.409には
三度礼拝して、「エットー エットー」と言って浜の方へ走り去る。これで村中の悪霊を捨て去るという。
さらに、P411には
歯固めとサメサシ(歳目差) 御頭は浜へ向かい、歯固めが行われる。これは西向きに舞衣を広げて御頭に鏡餅を噛ませ、月入りを拝礼することをいう。しばらく休んで、御頭は神楽師の手によって宇気比神社へ帰り、拝殿に一晩安置される。一般の人は歯固め以降の御頭の姿を見てはいけないとされ、先を割った竹を鳴らして、御頭が通っていることを知らせ、町民が道に出ないようにする。御頭は道案内をするオヤタイさんを口の中に納めて、神楽師に背負われて、誰にも会わずにチョンゴロ川(長五郎川)沿いを宮に帰り、安置される。
翌日のシマイマシ 御頭は翌日も神社に飾られ、朝からお参りをする町民もいる。翌朝の御膳には、昨日のものに一品加わる。(中略)夕方、神職・氏子総代・町会役員立会いのもと「シマイマシ」といって、御頭に神酒を供えてから、御頭神社に納める。この「シマイマシ」は「お出まし」に対するものだという(平成十六年十七年調査と町会資料による)。
とある。
【 20130209 の記録 】
- 御頭さんお飾り付け(村松町の御頭神事)
- 神事式典、年酒(ねんし)の式(村松町の御頭神事)
- 舞い始め(神社境内)(村松町の御頭神事)
- 刀抜き(村松町の御頭神事)
- 辻舞い(村松町の御頭神事)
→ ツムギ火入れ(村松町の御頭神事) - 山の神での舞い~悪魔祓い(村松町の御頭神事)
【参考】